東南アジア料理論 ⑫

スパイス
トウガラシ(12日目)
東南アジアの市場にいくと、トウガラシの鮮やかな赤が目につく。また、どこの食卓でもトウガラシが用意されている。
だが、トウガラシの原産はメキシコとアンデス地域。スパイスの多くは東南アジア原産だが、トウガラシは別なのである。アステカ、マヤ帝国ですでに使われていたとされ、この地域にはいまもトウガラシの物語や伝説が残されている。


(http://www.mbce.co.jp/tokita/by/byt.htmより)
 コロンブスがアメリカ大陸を発見した十五世紀末にヨーロッパに持ち帰り、その後急速に各地に広まった。日本への伝来には定説がないが、十六世紀にポルトガル人が長崎にもたらしたという説が有力である。当初は「南蛮胡椒」とも呼ばれていた。

トウガラシの品種は少なくない。調味料「タバスコ・ソース」は、タバスコという種類のトウガラシから作られている。いわゆる青いタバスコ・ソースは、ハラベーニョを主原料としている。日本ではいわゆる「タカノツメ」がよく知られており、これと同種のトウガラシはマレーシアなどではロンボクという。これよりもっと辛いのがバーズ・アイという最小種(長さ二・五センチ)のもの。
タイ料理が辛いのも、「プリック」と呼ばれるトウガラシをふんだんに使うことによる。特に「プリッキーヌー」という緑色の小粒のトウガラシは極辛で、普通の日本人では太刀打ちできない。タイでは「男の子はプリッキーヌーが何本も食べられるようになったら一人前」といわれている。
ちなみに、世界で最も辛いトウガラシといわれているのが、ペルー、ボリビアの標高二千メートル地帯に育つ「ロコットトウガラシ」である(吉田よし子『香辛料の民族学』)。
トウガラシの辛み成分はカプサイシンで、いろいろな効用が指摘されるようになっている。すでに一九八〇年代には、京都大学の研究チームが、カプサイシンが副腎皮質ホルモンの分泌を促しエネルギーの代謝を進めるという結果を発表している。また、胃を刺激して、消化液の分泌を促し、大腸のぜん動運動を助け消化吸収をよくするともいわれている。
トウガラシが様々な料理に使われる一つの理由は、煮ても焼いても辛さが変わらず、また油と相性がいいことである。酵素の働きで辛みの生成されるワサビやカラシは、熱を加えるとその辛さをほとんど失ってしまうのに対して、トウガラシは長時間加熱しても辛さが失われないのである。

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