東南アジア料理論⑧

納豆
インドネシアのテンペ(8日目)
インドネシアには、チリメンジャコやラッカセイなどとともに細く切ったテンペを油で揚げたのち、香辛料などで佃煮風に炒めた「カレン・テンペ」という料理がある。 テンペというのは、大豆に糸状のテンペ菌を入れて発酵させたインドネシアの伝統的食品。ハイビスカスの葉などにいるテンペ菌の胞子を大豆にまぶし、バナナの葉に包んで、一~二日醗酵させるのだ。まさにインドネシア版納豆だ。 
旨みに加え、ほのかな甘みと塩辛さが混ざった独特の味だ。日本の納豆のように匂いもなく、糸も引かない。
ジャワ島では日常的に消費されており、スープやカレーに入れて食べることも多い。
またインドネシアには、落花生の発酵食品オンチョム(Ontjom)がある。こちらは赤パンカビ(Neurospora)を使っている。
日本の納豆とは一味違ったテンペを日本に普及させようという試みも続けられてきた。日本国内には、「テンペ研究会」という組織もあり、テンペの研究を推進している。愛知学泉女子短大(岡崎市)の小玉泰子教授も、メンバーの一人である。
九五年六月には、インドネシア独立五十周年を記念して、インドネシアの食糧省の主宰で「全国伝統食品会議」が開催されたが、小玉教授は日本代表としてこの会議に出席している。日本の伝統料理としておから、いなりずしなどを紹介し、テンペコロッケ、テンペのおしずし、テンペみそ、テンペパンなども出品した。
地域別では、岡山県や佐賀県で特にテンペの普及が目覚ましい。岡山県工業技術センターは、約十年前から、各種中小企業と協力しながら、日本独自のテンペ加工食品を研究してきた。これまでにテンペを使ったソーセージ、クッキー、あられ、カレールー、スープ、食パンなどを試作し、現在はコロッケ、味噌が岡山市内のデパートで販売されている。
テンペ食品の開発研究に取り組んできた同センター製品開発部研究員の野崎信行さんは「テンペは一九八〇年代に米国でも菜食主義者を中心にブームになった。納豆のようなクセがないので、和、洋、中華料理の素材として十分利用できる。いろいろ作った中で、テンペみそ(通常の大豆とテンペを半々に使って発酵させる)の人気は高く、我が家では子供たちの大好物です。現在、テンペを使ったしょうゆも開発中」と話す。
同センターでは、九六年三月から毎月十日、「テンペ料理を楽しむ会」を開いている。
とりわけテンペみその注目度は高い。岡山市の割烹「二の丸」や「武蔵」は、客に出すみそ汁をすべてテンペみそに変えてしまったという。「二の丸」では、ハトムギテンペなどを使ったフルコースを客の注文に応じて出している。エビにテンペをはさんで揚げたてんぷら、から揚げなどがおいしく、固定客がつき始めたという(「毎日新聞」一九九七年八月二十六日付朝刊)。

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