マハティール元首相が新党結成

  マレーシアのマハティール元首相がついに新党を結成した。新党名「マレーシア統一プリブミ党」(Parti Pribumi Bersatu Malaysia)。
 ムヒディン・ヤシン前副首相が2016年8月9日、団体登録局に申請した。議長にはマハティール元首相が、党首にはムヒディン氏が、副党首にはムクリズ・マハティール氏が就任する。
 事の発端は、ナジブ首相の汚職疑惑にある。2009年にナジブ首相の肝いりで設立された政府系ファンド「1MDB」から、不正資金が同首相の個人口座に振り込まれたとの疑惑である。
 『ウォールストリート・ジャーナル』(2016年3月1日付、以下WSJ)の報道によると、ナジブ首相の口座に、2011年から13年の間に10億ドル(約1136億円)を超える入金があった。資金は数カ国の複雑な取引網を通じてナジブ首相の口座に送金された。送金にはアラブ首長国連邦アブダビ首長国の元当局者が関わっていた。
 「1MDB」のアドバイザーを務め、莫大な利益をあげてきたのが、米金融大手ゴールドマン・サックスである。
 両社絡みでマネーロンダリング(資金洗浄)が行われた疑いがあり、米当局だけではなく、世界的な捜査が展開されている。マレーシア、シンガポール、スイス、米国などが協力して調査をしている。
 『ブルームバーグ』(2016年3月10日)によると、ゴールドマンは「1MDB」に食い込むために、ナジブ首相の側近政治家ジャマルディン・ジャリス氏の娘アニス・ジャマルディン氏を採用し、ゴールドマンのシンガポール支店で働かせていたという。

 これに関与したのが、ゴールドマン東南アジア部門の会長だったティム・ライスナー氏だ。米当局は、不正資金がライスナー氏の個人口座にも流れた可能性があるとして、2016年2月下旬にライスナー氏に召喚状を出している。ライスナー氏は「1MDB」が65億ドルを調達した債券発行に協力、通常以上の手数料をゴールドマンにもたらしたとされる。
 WSJも、2015年7月にこの疑惑を報じて以来、度々この問題を取り上げてきた。2016年5月12日には、ナジブ首相の義理の息子が、「1MDB」から流出したとされる資金のうち5000万ル以上を、ニューヨークやロサンゼルスの不動産の購入に充てていたと報じた。さらに5月19日には、「1MDB」から流出したとされる資金によって、ナジブ首相の義理の息子が2012年にロンドン中心部に2325万ポンドの家を購入していたと書いた。

 さて、この汚職問題を厳しく追及してきたのが、マハティール氏である。すでに、2014年8月にマハティール氏はナジブ氏を支持しないと表明し、2015年4月には退陣を要求するようになった。
 また、ムヒディン副首相も、ナジブ首相に疑惑の説明を求めていたが、2015年7月28日に解任されてしまった。
 マハティール氏は2015年11月には、反政府デモに参加しナジブ首相の退陣を求めるに至った。マハティール首相の三男ムクリズ氏も、ナジブ首相に対する批判を強め、2016年2月3日にクダ州首相を辞任に追い込まれた。
 2月29日、マハティール氏は与党「統一マレー国民組織」(UMNO)からの離党を表明、3月4日には首都クアラルンプールで主要野党の指導者や幹部とともに、政権打倒を目指す「国民宣言」に署名した。
 ナジブ首相は、3月11日の閣議で、マハティール氏のペトロナス顧問職解任を全会一致で決定した。
 これに対して3月23日、マハティール氏は「1MDB」疑惑を巡り、首相が職権を乱用して捜査を妨害したとして、ナジブ氏を相手取りクアラルンプール高等裁判所に提訴している。
 マハティール氏は、3月30日には、国民車メーカー、プロトン会長職、ランカウイ開発庁のアドバイザー、ペトロナス技術大学総長なども辞任した。
 6月29日には、ナジブ首相の汚職疑惑を追及してきた、華人主体の野党・民主行動党(DAP)書記長のリム・グアンエン氏が汚職容疑で逮捕された。そして7月14日、ついにマハティール氏は新党結成を表明するに至った。

コメントを残す