伯家神道─清原貞雄『神道沿革史論』(大鐙閣、大正8年)より

 以下、清原貞雄『神道沿革史論』(大鐙閣、大正8年)より伯家神道の部分を引く。
 〈伯家神道は元、神祇伯の家に伝はつた神事から来たもので、白河家のものである、所謂神祇四姓(王氏即白河、中臣、忌部、卜部)の一で、花山天皇の皇子清仁親王の御子、延信王の神祇伯に任ぜられて以来、代々伯職を相続し、永く王氏を称したので、共儀式の事等に就ては伯家部類に詳しく見えて居るのが今一々述べぬ、其職掌は宮中及神祇官に於て神事を掌るもので、従来、神道説等に関係は無かつたのである、然るに吉田神道が段々盛になり、吉川神道、垂加神道が唱へらるゝに至つて、其風潮につれて伯家でも遂に神道説を起す訛に至つた。其神道説を覗ふべきものは多く遺つて居らぬが、神道通国弁義二巻、及び神祇伯家学則に依りて大体を知る事が出来る。神道通国弁義は神祇伯資顕王家の学頭森昌胤の名を以て書かれたもので、資顕王は宝暦九年に神祇伯となり、天明五年に薨じた人である(白河家系譜)。此学頭なるものは何時頃からあつたものか詳で無いが、伯家部類には白河家学頭臼井帯刀なるものが八神殿の御霊代を盗んで一条兼香に奉つた事が見えて居るのを見ると、遅くとも元禄か宝永頃にあつたものである。今其説の大要を述ぶれば、神道は天地の神気循環して万物生々化々する名であつて万物一般の大道である、神といふは大素の無の所から、有と天地開闢する運をなす活気を神といふので、共外に体が有る者では無い、凡て天地の万物は神化に出る、其神化の妙遷、理気質形と次第して見ると、理気の無形の幽隠と云つて目に見る事が出来ず、質形は有実の顕露と云つて目に見るの実である、幽隠は心に観じて見る所を云ひ、顕露は現在に見るといふのである、儒教に大極動て陽を生じ、静々して陰を生ずるとあるが、陰陽二気の神と云ふは諾冊二尊の事である。三は神道の成数で、事物皆三つを以て分るゝ、理と気と形が無ければ見る事が出来ず、質から目に見る者が出来て物我の別がある故に、皆天地にして日月星と分れ、又人は君臣と分れて居る。
 天御中主尊は理天地の理神、国常立尊は気天地の理神である。天地の開闢する理、気、質、形の次第、乾坤、陰陽、天地といふ差別をよく得心すれば、神代紀の旨自ら明かになるのである。天地の間は皆自然の神化あつて、神化即ち神道である、其神と云ふは聖にして知る可らざるもの、而も自然を主どるものである。神道の中に養はれて神を知らぬから身を知らず、身を知らぬから忠孝も知らぬのである、万国一般の神道から云へば、仏は迫害供養を行事とする天竺の神道、儒は五常五倫を行事とする唐の神道、日本は祈祷祭祀を行事とする日本の神道で、只其行事勤めかたの替があるばかりである。
 以上は其神道説の一班であるが、大体に於て之も又宋学の理気説等から脱化して属る事が判る。其外に従来の神道者流の秘伝口授等を設けた事を攻撃し、殊に吉田、吉川、垂加等の諸派を罵つて居る。
 神祇伯家学則は伯王殿御口授、御門葉等謹承、として書き出し、終りに神祇伯家四十二代文化十二年の奥書がある、四十二代は資顕王である、此学則は従来あつた所の伯家条目なものゝ最初に、「夫神道者万国一般之大道、古今不易之綱紀、神武一体法令之出処也、とあるのを始めとして、孝徳紀の惟神者謂随神道亦自有神道といふ言葉、古事記の序にある乾坤初分云々の文等を掲げ、之等を説明敷衍し、且つ固く体してよく守るべき旨を述べたものである。〉

伯家神道関連書籍

編著者 書名 出版社 出版年
清原貞雄 神道沿革史論 大鐙閣 大正8年
山田忠孝編 神道宝鑑 国教学館出版部 大正11年
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岸一太 神道の批判 交蘭社 昭和4年
清原貞雄 神道史 厚生閣 昭和7年
神祗ニ関スル展覧会目録 石川県図書館協会 昭和8年
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佐藤三郎 神道概説・諸祭神名総覧索引 明文社 昭和12年
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清原貞雄 神道史講話 目黒書店 昭14年
宮地直一 神祇史大系 明治書院 昭和16年
高橋梵仙 佐久良東雄 新興亜社 昭和17年
丹羽保次郎 惟神の大道 東洋図書 昭和17年
河野省三 近世神道教化の研究 宗教研究室 昭和30年
天理図書館編 吉田文庫神道書目録 天理大学出版部 昭和40年
近藤喜博編 白川家門人帳 白川家門人帳刊行会 昭和47年
神道大系編纂会編 神道大系 論説編 11 神道大系編纂会 平成元年
鬼倉足日公 生命の甕 山雅房 平成3年
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富士吉田市史編さん委員会編 富士吉田市史 通史編 第3巻(近・現代) 富士吉田市 平成11年
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佐々木重人編著 天皇祭祀を司っていた伯家神道 : 秘儀継承者七沢賢治がえがく新創世記 : 地球コアにまで響き渡るコトダマ (「超知」ライブラリー ; 38) 徳間書店 平成20年
大野靖志 言霊はこうして実現する : 伯家神道の秘儀継承者・七沢賢治が明かす神話と最先端科学の世界 文芸社 平成22年
金光英子 白川家の門人 金光英子 平成23年
保江邦夫 伯家神道の祝之神事を授かった僕がなぜ : ハトホルの秘儀inギザの大ピラミッド ヒカルランド 平成25年
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