マレーシア、TPP離脱の可能性も

マハティール元首相がTPPに対する警戒論を繰り返す中で、マレーシア政府がTPPから離脱する可能性も出てきた。2013年8月28日付の『The Malaysian Reserve』は、「Malaysia may review TPP move」と題して次のように報じた。

Malaysia will review its commitment to the controversial Trans Pacific Partnership (TPP) agreement if studies it has commissioned find that the regional free trade agreement (FTA) is detrimental to sections of the Malaysian economy.

Minister of International Trade and Industry Datuk Seri Mustapa Mohamed said following stiff opposition by Malaysian groups, the government has commissioned two studies to weigh the pros and cons of Malaysia joining the TPP.

He said the government will make a decision based on the findings of the two studies.
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吉田神道と垂加神道①

山崎闇斎は、神籬磐境の伝を吉川惟足から伝えられた。
しかし、惟足の伝に潜む問題点を看過しなかった。惟足の子従長が整理した『四重奥秘神籬磐境口授』(『神籬磐境口訣』)には、「君道ハ日ノ徳ヲ以テ心トス、日ノ徳ヲウシナフ時ハ、天命ニ違ヘリ、天命ニ違フ時ハ、其位ニ立ガタシ」と書かれていたのである。

これはまさに易姓革命に通ずる思想であり、『拘幽操』の精神に適うものではない。ここで闇斎が立ち止まり、「神籬は皇統守護の大道、磐境は堅固不壊の心法」との立場を固めたことは、歴史的な意味を持っている。近藤啓吾先生は、闇斎が惟足の限界を超えて、わが国の道義の本源への考究を進めたことに「闇斎の学問の面目があり、垂加神道の本義がある」と書いている。

TPP年内妥結の虚構

 2013年8月23日、ブルネイで開かれていたTPP交渉の閣僚会合は、「年内妥結に向け、交渉を加速する」と明記した共同声明をまとめ閉幕した。
しかし、年内妥結が難しいことはマレーシアの姿勢を見ても明白だ。
マハティール元首相が公然とTPP慎重論を唱えに至り、マレーシア政府にとって交渉での安易な妥協は難しくなっているのだ。
8月15日には、マレーシア政府の国際貿易産業省が「手頃な医薬品と医療へのアクセスを守ることは引き続き最優先事項であり、進行中のTPP交渉では妥協しない」などとする声明を発表している。ところが、日本のメディアは、こうしたマレーシアの姿勢を充分に報じていない。

「[地位協定見直し]改憲よりこっちが先だ」(『沖縄タイムス』2013年8月19日付社説)

 『沖縄タイムス』は、2013年8月19日付社説で、「[地位協定見直し]改憲よりこっちが先だ」と題して次のように主張した。
 〈地位協定がらみの事案に対する解決策は二つある。一つは地位協定そのものを見直し、自治体の権限強化と不平等性の解消を図ること。もう一つは地位協定事案が多発する沖縄の基地密度を大幅に軽減し、事件事故の発生そのものを断つこと、である。
 旧安保条約がそうであったように、占領時代に締結された行政協定は、著しく不平等な内容の協定だった。行政協定の不平等な中身をほぼそっくり引き継いだのが現在の地位協定である。
 地位協定と関連取り決めは、国家間の軍事的必要を優先するあまり、被害を受ける住民の視点が著しく欠如している。オスプレイの配備は基地周辺の住民生活に大きな影響を与えるが、住民の声を反映させる仕組みは存在しない。
 「地位協定で認められているから問題ない」という説明は、住民を納得させることができない。今、問わなければならないのは、冷戦時代に、国民の知らない間にできた地位協定で、21世紀に生起する問題を処理していいのか、という本質的問題だ。
 地位協定は現実に対応できない代物になりつつある。憲法改正よりも優先すべきは地位協定の見直しである。国内法の原則適用に向けた外交交渉を始めるべきだ〉

「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」の暴挙


小泉・竹中の新自由主義路線は、労働分野にも強引に持ち込まれ、格差の拡大に拍車をかけ、わが国の社稷を破壊していった。この流れに終止符を打ったのが、2009年の政権交代であった。同年9月9日、民主党、社会党、国民新党の連立与党は、次のように合意した。「日雇い派遣」「スポット派遣」の禁止のみならず、「登録型派遣」は原則禁止して安定した雇用とする。製造業派遣も原則的に禁止する。違法派遣の場合の「直接雇用みなし制度」の創設、マージン率の情報公開など、「派遣業法」から「派遣労働者保護法」にあらためる。これらは、小泉時代の新自由主義を正し、大御宝である労働者を守るための当然の規制である。
三党合意に基づいて、2010年4月には労働者派遣法改正案が提出されたが、成立しないまま時間だけが過ぎていった。この間、改正案成立を強く主張していた社民党が連立政権を離脱した。
そして、2011年11月に異常事態が起こったのだ。驚くことに、民主党は、自民党、公明党との間で「製造業派遣の原則禁止」を削除した改正案に合意し、法案を骨抜きにしてしまった。民主党に対する人材ビジネス業界からの働きかけがあったのか。
そして、2013年8月20日に、厚生労働省の有識者研究会「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」が、とんでもない報告書をまとめた。座長を務めているのは、鎌田耕一東洋大学法学部教授。
そこには、「企業が一つの業務に派遣労働者を使用できる期間を最長3年に制限する現行ルールを撤廃し、労働組合の同意を条件に人を入れ替えれば派遣を使い続けられるようにすべきだ」と謳われている。
安倍政権は、社稷を破壊する小泉時代の新自由主義路線に戻ろうというのか。

「今後の労働者派遣制度の在り方に関する研究会」報告書(2013年8月20日)

書評─小倉和夫著『日本のアジア外交 二千年の系譜』(『月刊日本』平成25年9月号)

 現在わが国と近隣諸国との緊張が高まっているが、通常日中関係や日韓関係を語る際、その視野に置かれるのは、せいぜい大東亜戦争に至る100年ほどの歴史であろう。
しかし、わが国とアジア諸国との関係を考えるには、さらに長期的な視点が求められる。この要請に応えてくれるのが、2000年の歴史に遡って日本のアジア外交を考察した本書である。著者は、日本外交の明白なビジョンが今求められていると指摘し、次のように書いている。
〈そうしたビジョンを考えるにあたっては、観察の時間軸を長くのばし、卑弥呼や聖徳太子の外交からも、教訓をえることが必要に思われる。なぜなら、日本近代のアジア外交が、欧米外交の従属変数になってしまったことの反省の上に立って、新しいアジア外交を再構築しなければならないと思われるからである。すなわち、日本外交が、欧米を中心とする国際社会にどう対応すべきかという課題をつきつけられた「近代」に突入する以前の段階で、日本とアジアがどう向かい合ってきたかを考察してみる必要があるのではなかろうか〉(2~3頁) 続きを読む 書評─小倉和夫著『日本のアジア外交 二千年の系譜』(『月刊日本』平成25年9月号)

明和事件の真相─「大弐が幕府に恐れられた理由」『月刊日本』2013年9月号

 『月刊日本』の連載「明日のサムライたちへ 志士の魂を揺り動かした十冊」で山県大弐『柳子新論』を取り上げています。
2013年9月号には、「大弐が幕府に恐れられた理由」と題して、大弐が死罪となった明和事件の真相について迫りました。

フィリピンの志士ベニグノ・ラモス関係資料①

 防衛省防衛研究所所蔵の「比律賓独立党首領ラモス氏歓迎茶話会に関する件」(昭和11年4月16日作成)には、昭和11年4月16日に開かれたフィリピンの志士ベニグノ・ラモス歓迎茶話会についての情報が記録されている。
「比律浜独立党(サクダリスタ党)首領ラモス氏の歓迎茶話会を四月十五日正午ヨリ当協会に於て開催、中谷幹事より歓迎の挨拶 犬塚理事よりラムス氏の紹介ありて後ラムス氏より比律浜独立運動情勢につき説明あり、種々懇談を交換して三時半散会した」とある。
(PDFデータは、アジア歴史資料センターのサイトからダウンロードしたDjVuデータをもとに作成したもの)