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「二子なかりせば、乱臣賊子、迹を後世に接せん」

 韓愈『伯夷の頌』の末尾には、「二子なかりせば、乱臣賊子、迹を後世に接せん」とあります。二子(伯夷・叔斉)がいなかったら、乱臣賊子が次々と絶え間なく出現したことだろう、と。
 これについて、近藤啓吾先生は『靖献遺言講義』で以下の絅斎講説を引いています。
 〈『拘幽操』の附録の跋にかくも、この思い入れで、やゝともすれば後世での手よく世をぬすむものが、湯・武を引きべつにする。それでこの二子なくば乱臣賊子あとを後世につがせうぞ。王莽や曹操や許魯斎や其外の世をぬすむ男どもを一坐にならべて、湯・武ばなしをしたらば、惣々尤じや聖人じやと云をゝ。其中へ伯夷の名分を云いたてたら、どれも色ちがひして、ものをゑ云ふまいぞ〉(原文カタカナ)