「『東洋の理想』」カテゴリーアーカイブ

岡倉天心の言葉

「アジアは一つである。ヒマラヤ山脈は、二つの強大な文明、すなわち、孔子の共同社会主義をもつ中国文明と、ヴェーダの個人主義をもつインド文明とを、ただ強調するためにのみ分っている。しかし、この雪をいただく障壁さえも、究極普遍的なるものを求める愛の広いひろがりを、一瞬たりとも断ち切ることはできないのである。そして、この愛こそは、すべてのアジア民族に共通の思想的遣伝であり、かれらをして世界のすべての大宗教を生み出すことを得させ、また、特殊に留意し、人生の目的ではなくして手段をさがし出すことを好む地中海やバルト海沿岸の諸民族からかれらを区別するところのものである」(富原芳彰訳/『東洋の理想』) Continue reading “岡倉天心の言葉” »

岡倉天心の日本精神(1) 『東洋の理想』

 
 東洋の宗教的価値を称揚した岡倉天心は、慈悲・寛容の精神とともに調和の精神を重視した。そんな天心は、神道・日本精神についてどう語っていたのか。
天心の著作の中の神道・日本精神を紹介しておきたい。まず、『東洋の理想』からである(翻訳は村岡博訳『東邦の理想』による)。 

「歴史の曙光と共に大和民族は、戦に勇猛に、平和の文芸に温雅に、天孫降臨と印度神話の伝説を吹き込まれてゐて、詩歌を愛好し、婦人に対して非常な敬虔の念を懐いてゐる、こぢんまりした民族として現れてゐる」 32頁
「印度のトーラン[鳥居に似た仏寺の儀式用門]を多分に想起させる鳥居や玉垣のある清浄無垢な祖先崇拝の神聖な社である伊勢の大廟及び出雲の大社はその原型の侭に二十年毎に若さを新たにして、簡素な調和美しく、太古の姿をその侭に保存せられてゐる」 34頁
「我が民族的誇と有機的統一軆といふ盤石は、亜細亜文明の二大極地より打寄する強大な波涛を物ともせず千古揺ぎなきものである。国民精神は未だ嘗て圧倒せられたることなく、模倣が自由な創作力に取つて代つたことも決してなかつたのである。我々の蒙つた影響が如何に強大なものであつても、常に之を受入れて再び適用するに十分有り余る程の精気を備えてゐた」 35頁 Continue reading “岡倉天心の日本精神(1) 『東洋の理想』” »

岡倉天心の日本精神① 『東洋の理想』

 東洋の宗教的価値を称揚した岡倉天心は、慈悲・寛容の精神とともに調和の精神を重視した。そんな天心は、神道・日本精神についてどう語っていたのか。
天心の著作の中の神道・日本精神を紹介しておきたい。まず、『東洋の理想』からである(翻訳は村岡博訳『東邦の理想』による)。

「歴史の曙光と共に大和民族は、戰に勇猛に、平和の文藝に温雅に、天孫降臨と印度神話の傳説を吹き込まれてゐて、詩歌を愛好し、婦人に對して非常な敬虔の念を懷いてゐる、こぢんまりした民族として現れてゐる」 32頁
「印度のトーラン[鳥居に似た佛寺の儀式用門]を多分に想起させる鳥居や玉垣のある清淨無垢な祖先崇拜の神聖な社である伊勢の大廟及び出雲の大社はその原型の儘に二十年毎に若さを新たにして、簡素な調和美しく、太古の姿をその儘に保存せられてゐる」 34頁
「我が民族的誇と有機的統一體といふ盤石は、亞細亞文明の二大極地より打寄する強大な波涛を物ともせず千古搖ぎなきものである。國民精神は未だ甞て壓倒せられたることなく、模倣が自由な創作力に取つて代つたことも決してなかつたのである。我々の蒙つた影響が如何に強大なものであつても、常に之を受入れて再び適用するに十分有り餘る程の精氣を備えてゐた」 35頁 Continue reading “岡倉天心の日本精神① 『東洋の理想』” »

藤原岩市と東洋の理想

 藤原岩市は、『留魂録』(振学出版、1986年)で、次のように書いている。
「日露戦争の直前、明治の大先覚者岡倉天心は東洋の真実を究めんとしてインドに渡っている。マドラスでヴィベカナンダという聖者に遇い、彼に導かれて、ノーベル賞の詩聖タゴール(アジアで最初の受賞者)と相識り、詩聖の宅に寄偶、東洋文明の真髄を語り合い、肝胆相照らしている。津波のように次々と押し寄せる回教徒やキリスト教徒の侵略破壊と物質本位、商業主義の搾取と圧制によって、数千年前に発祥し、燦然とインドと中国に開き輝いた東洋文明とそれが産んだ真善美の宗教と道義の文化と芸術は、徹底的に破壊され、瓦礫の遺跡と化し果てたことを嘆いている。天心はインドの青年に檄して、東洋精神に目覚め、隷属を脱却して東洋文化を振興せんことを激励している。
天心とタゴールはインドと中国に発祥した文化が幸いに日本に伝わり、日本伝承の文化に融合し、開花して信託されており、これをインドを初めアジアの国々に還元止揚して東洋精神を恢興しようと誓い合っている。その直後に日露戦争の大勝を見てインドを初めアジア隷属民衆は狂喜したのである。天心は弟子の横山大観、菱田春草をもインドに派遣し、彼の志を探究させている。

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岡倉天心関連文献


1985年以降に出版されたもの

著者 書籍写真 書名 副書名 出版社 出版年
大原富枝 ベンガルの憂愁 岡倉天心とインド女流詩人 ウェッジ 2008年12月
手塚賢次 二十一世紀の岡倉天心 文芸社 2008年12月
大井一男 美術商(アートディーラー)・岡倉天心 文芸社 2008年10月
岡倉天心 茶の本 対訳ニッポン双書 アイビーシーパブリッシング 2008年4月
岡倉天心、マイケル・ブレーズ 茶の本 IBCパブリッシング 2008年1月 Continue reading “岡倉天心関連文献” »

和辻哲郎「岡倉先生の思ひ出」『帝大新聞』昭和11年1月

今度岡倉一雄氏の編輯で『岡倉天心全集』が出始めた。第一巻は英文で発表せられた『東洋の理想』及び『日本の覚醒』の訳文を載せてゐる。第二巻は『東洋に対する鑑識の性質と価値』その他の諸篇、第三巻は『茶の書』を含む筈であるといふ。岡倉先生の主要著作が英文であつたため在来日本の読者に比較的縁遠かつたことは、岡倉先生を知る者が皆遺憾としたところであつた。今その障害を除いて先生の天才を同胞の間に広めることは誠に喜ばしい企てであると思ふ。 Continue reading “和辻哲郎「岡倉先生の思ひ出」『帝大新聞』昭和11年1月” »