「東南アジア料理」カテゴリーアーカイブ

マングローブの中のレストラン バーン・タイ

マハティール首相の発案

 自然環境を活かした観光、「エコ・ツーリズム」を推進するマレーシアならではのレストランが、ランカウイにはある。マングローブの中に存在するタイ料理レストラン「バーンタイ」(Barn Thai)である。
熱帯・亜熱帯地域で、海水と淡水の交じり合うエリアを汽水域という。この汽水域に広く分布するヒルギ種やハマザクロなどの植物が、マングローブである。そこは魚やエビ・カニ、水鳥や小動物の豊かな生息域となっており、地球の生態系を維持する上で重要な役割を果している。またマングローブの森は、台風や洪水などから人々を守る防波堤の役割も果している。 続きを読む マングローブの中のレストラン バーン・タイ

東南アジア料理論⑲

ココナツミルク

ココナツミルクのデザート(19日目)
東南アジアのデザートには、ココナツミルクが欠かせない。
よく知られているのが、ナタデココである。ナタデココとは、スペイン語で「ココヤシの浮遊物」の意味で、ココナツミルクを発酵させたデザートである。タイなどを含め東南アジア各地には類似のデザートがあるが、やはり本場はフィリピンである。
ナタデココが日本でブームになったのは、その独特の歯ごたえに加え、ヘルシーさにある。日本の健康志向とうまく合致したのである。まず、低カロリーである。そして、食物繊維も豊富。ナタデココの繊維成分であるセルロースに血中のコレステロールの低下作用があるとの研究もある。  続きを読む 東南アジア料理論⑲

東南アジア料理論 ⑱

ココナツミルク

飯・麺とココナツミルク(18日目)
マレーシア滞在中、何度か朝起きてすぐ、ブキビンタン界隈の屋台をぶらついた。
朝食を物色していると「ナシレマ」(Nasi Lemak)が目にとまった。これが有名なココナツミルクで炊いたご飯である。
マレーシアでは、干し小魚(イカンビリズ)、ピーナッツ、サンバルで味つけしたイカや野菜などの簡単なおかずといっしょに食べるのが通常のパターン。シンガポールには、マレーシアに近いナシレマと中華風のナシレマとがある。中華風のナシレマにはランチョンミート(油で揚げたハム)がついてくることが多い。  続きを読む 東南アジア料理論 ⑱

東南アジア料理論⑰

ココナツミルク

東南アジアを覆うココナツミルク煮(17日目)
東南アジアはすっぽり魚醤圏に入るが、同時にココナツ圏にも入る。もちろん、ココナツ圏には東南アジアだけでなく南太平洋の島々が含まれる。
「椰子の木の並ぶ白い砂浜」。依然として熱帯地域の国々にはそんなイメージがある。日本ではココナツは結構いい値段だが、当然ながら東南アジアでは極めて安価。道をあるけば人々が気楽にココナツジュースを飲んでいる。
ところで、タイ料理の旨さの秘訣は、「辛、酸、甘、塩」の四種の味が巧みに調和されていることにあるとされる。  続きを読む 東南アジア料理論⑰

東南アジア料理論⑯

酸味野菜

フィリピンの酸味スープ(16日目)

ベトナムのカン・チュアに相当するフィリピンのスープが、シニガン(sinigang)である。
具によって日本の味噌汁感覚にもご馳走にもなるスープで、もう一つの代表的なスープ、ニラガンとともに高い人気を誇っている。シニガンは、カン・チュアと同じように魚醤(パティス)で味を整えるところが特徴である。もう一つの特徴は、米のとぎ汁を入れること。こうすると、味にまろやかさがでるのである。
青トウガラシ、魚醤を使う典型的な東南アジア・スープだが、それほど辛くはない。フィリピンの料理は、次章で述べる通り、一部地方を除いてそれほど辛くないのである。これは、インド文化の影響の及び方とも無関係ではない。  続きを読む 東南アジア料理論⑯

東南アジア料理論⑮

酸味野菜

タマリンド(15日目)

カレーは、スパイスだけでなく独特の酸味に支えられている。これはタマリンド(Tamarind)の酸味によるものである。

 タマリンドというのは、熱帯原産のマメ科の常緑高木で、さやは十センチメートルから十五センチメートルに成長して、焦げ茶色に熟してくる。豆を包んでいる赤茶色のペースト状の果肉の部分に酸味があるのだ。その酸味は、レモンよりもむしろ梅干しに近い。酒石酸およびクエン酸で、消化を助け、身体の熱をとる作用もあるという。  続きを読む 東南アジア料理論⑮

東南アジア料理論⑭

スパイス

カレーの起源(14日目)

かつては、インドにはカレー粉というものはなかった。それぞれの志向に合わせて自分でスパイスを調合するのが常識だったからである。カプシカムというトウガラシの一種をはじめ、ジンジャー、ブラックペパー、コリアンダー、カルダモン、シナモン、クローブ、ターメリック、サフラン、タイム、オレンジピール、マージョラム、クミン、フェンネル、ナツメグ、クミンシード、カンゾー、ガーリック、メース、ケシの実――など。ざっと二十種類のスパイスを自分でまぜて作るのが、カレー本来の姿である。  続きを読む 東南アジア料理論⑭

東南アジア料理論⑬

スパイス
サンバル(13日目)

 「サンバルを上手に調合できれば婿探しに苦労しない」。インドネシアではそう言われている。
サンバル(SAMBAL)とは、トウガラシをベースとして特性ソースのこと。いわばタバスコ・ソースのようなもので、万能の調味料として用いられている。インドネシア風チャーハンの「ナシ・ゴレン」のベースとなるのも、このサンバルから作った「サンバル・ゴレン」である。

サンバルなどのインドネシアの調味料
(上野アメ横センター地下) 続きを読む 東南アジア料理論⑬

東南アジア料理論 ⑫

スパイス
トウガラシ(12日目)
東南アジアの市場にいくと、トウガラシの鮮やかな赤が目につく。また、どこの食卓でもトウガラシが用意されている。
だが、トウガラシの原産はメキシコとアンデス地域。スパイスの多くは東南アジア原産だが、トウガラシは別なのである。アステカ、マヤ帝国ですでに使われていたとされ、この地域にはいまもトウガラシの物語や伝説が残されている。 続きを読む 東南アジア料理論 ⑫

東南アジア料理論⑪

スパイス
スパイスの目的と歴史(11日目)
東南アジアにはスパイシーな食べ物が少なくない。ここでスパイシーというのは、単に辛いということだけでなく、文字通りスパイスをふんだんに使った料理という意味だ。
例えばインドネシアには、「ルンダン」という牛肉のココナッツ煮があるが、この料理には数種類のスパイスが欠かせない。「ソプブントット」というオックス・テールのスープには、コショウ、ショウガだけでなくナツメグ、メース、シナモン、クローブなどを用いる。 続きを読む 東南アジア料理論⑪